• 主に長崎県、佐賀県を中心に元刑事のキャリアを活かし行政書士&災害危機管理に取り組んでいます。

消費貸借契約公正証書と強制執行

金銭の貸し借りについては、よく問題になるのが、金を貸したのに返済期日がきても返してくれないという債務不履行がある。そのために消費貸借契約公正証書を作成し、その際、執行文を付与することがよくある。要するに公正証書で強制執行ができるようにしておくという方法だ。

消費貸借契約は要物契約とされ、契約の前に貸主が借主に金銭を交付しておくことが必要となる契約である。契約では、例えば、「買います」「売ります」の意思表示の合意があれば成立する諾成契約が通常である。ところが、消費貸借契約では、「借ります」「貸します」の合意だけではなく、実際に金銭の授受が必要とされ、これが要物契約である。

平成29年の債権法改正により、民法でも、諾成的消費貸借契約が明記され、金銭の授受がなくても、消費貸借契約を締結することが可能となった。しかし、諾成的消費貸借契約は書面でしなければならないとされた(民法587条の2第1項)。

それでは、貸した金を返してもらえないときはどうするのか。その場合は、債権者は債務者に対して裁判を起こし、勝訴の確定判決を受けて支払ってもうらということになるが、それでも支払わない場合は、強制執行をし、差押えた財産(不動産、預貯金等)を金に換えて支払いを受けるというやり方がある。

強制執行する場合は、債務名義が必要となる。債務名義とは財産に対して強制執行(差押え)をすることができる公的な文書のことをいう。この債務名義には裁判所の確定判決が典型例であるが、公正証書もそれに含まれる(民事執行法22条5号)。但し、公正証書の場合は金銭執行しかできず、建物を明け渡せというような強制執行はできない。

公正証書で強制執行ができるようにするには、どのような記載が必要か。この場合には、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されていることが必要である(民事執行法22条5号)。例えば、「BはAに令和〇年〇月〇日に限り、〇〇円を支払う」という給付文言と「〇条に定める金銭の支払を怠ったときは、Bは直ちに強制執行に服する」という承諾文言が記載されていることが必要だということ。

それに加えて、「債権者は、債務者に対し、この公正証書によって強制執行することができる」という公証人による執行文の付与が必要である。さらに、債務者に対する債務名義の謄本等があらかじめ送達されていることが必要である(民事執行法29条)。要するに、強制執行するためには、給付文言と強制執行承諾文が入った公正証書と執行文、それに債務者への送達が必要ということだ。

ここで注意しなけらばならないのは、要物契約である消費貸借公正証書では金銭の授受が前提であるため、借主が返済しなければ、それで強制執行が可能となるが、諾成的金銭消費貸借契約公正証書では、金銭の授受がない段階での契約であるため、その公正証書によって強制執行することはできないことになる。その場合には、金銭の授受があった後、改めて金銭消費貸借契約公正証書を作成することが肝要である。

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