総務省統計局によると、2024年9月末現在、65歳以上の高齢人口は3,625万人で、総人口に占めるその割合は29.3%と世界一である。わが国は、既に超少子高齢化をばく進中と言え、政府を挙げて対策を打っているが、なかなかその効果は表れていない。
高齢化に伴う問題は多種多様だ。その中の一つに相続がある。被相続人が死亡すれば、相続が発生する。その中にはプラスの財産もあれば、マイナス財産もある。今回は、マイナス財産、いわゆる相続財産に債務があった場合、その債権者が相続人に対してどのような権利行使ができるか、それをみてみたい。
民法902条の2は、相続分の指定がある場合の債権者の権利行使を規定している。つまり、被相続人が有していた債務の債権者は、相続分の指定がされた場合でも、それぞれの相続人に対して法定相続分に応じた請求ができるということである。
例えば、AがYから1,000万円を借り、それを返済する前にAが死亡し、妻Bと子C、Ⅾが相続した場合、債権者Yは法定相続分に従って、Bに500万円、C及びDにそれぞれ250万円ずつ請求することができる。被相続人Aが、子Cが資産を有しているにも係わらず、資産の乏しい子Dに全ての債務を承継させるという遺言書を作成したとしても、債権者Yは法定相続分に応じた権利行使が可能であり、資産を有する子Cに対しても250万円の請求ができるということになる。
しかし、被相続人Aが全財産(例えば、5,000万円だとします)を子Dに承継させるという遺言書をの残した場合、債権者Yは、子Dに250万円しか請求できないのかという問題が生じてくる。子Dは1,000万円の債務を承継したとしても、4,000万円が残るわけだから、そこに不均衡が生じることになる。
そこで、民法902条の2(ただし書き)は、債権者が共同相続人の一人に対してその指定された相続分に応じた債務の承継を承認したときは、この限りでないと規定している。つまり、債権者Yは,子Dが債務を承継したことを承認れば(意思表示)、子Dに1,000万円全てを請求することができるのである。
ちなみに、債権者が法定相続分に応じた請求をした後、指定相続分に応じた債務の承認をすることは可能かという問題については、債務の承継を承認することができる期間は制限がないため、指定相続分に応じた債務の承認は可能である。