• 主に長崎県、佐賀県を中心に元刑事のキャリアを活かし行政書士&災害危機管理に取り組んでいます。

闇バイト対策

昨日(10月4日)の朝刊に、10月3日、「ルフィ」ら特殊詐欺グループの指示役3人が強盗殺人未遂並びに住居侵入で警視庁に再逮捕されたという記事が掲載されていた。

3人の逮捕事実は、実行犯(既に逮捕済み)と共謀の上、昨年12月、広島県西区の店舗兼住宅に宅配業者を装って侵入し、親子3名に対し、工具等で頭部等を殴打するなどの暴行を加えて反抗を抑圧し、現金約250万円や腕時計などを強奪したものであり、そのうち50歳の男性に対し、脳挫傷(意識不明)などの傷害を負わせたというものである。

この3人は、事件当時フィリピンの収容所におり、スマートフォン等で実行役らに指示を出していたものであるが、刑法の観点では、この3人が実行行為に加わっていなくても共謀共同正犯に該当するし、外国において一定の犯罪を行った場合に適用される「国民の国外犯」にも該当することになる。

また、この広島事件では、この指示役らが、「殴ったり蹴ったりしないと報酬はあげない。みなさん容赦なくやっちゃってください」と指示したという。まさに悪質性極まりない犯行である。

今、闇バイトが社会問題化している。闇バイトとは、犯罪組織がSNSやインターネット掲示板で、「高額」「即日現金」「高額即金」などの謳い文句で実行役を募集し、それに応募した者を特殊詐欺(ニセ電話詐欺)の受け子や出し子、架け子などの実行行為をさせることである。

今では特殊詐欺ばかりではなく、強盗殺人事件を敢行することも厭わず、犯罪を益々エスカレートさせている。

この特殊詐欺グループの指示役の「ルフィ」らは、この犯行グループの中心人物には相違ないだろうが、果たしてこの組織の支配者だと言えるのか。

持論であるが、おそらく背後には反社(反社会的勢力)が存在しているだろう。この種の犯罪にはつきものだ。

反社、特に暴力団は暴対法や暴排条例等によってシノギが厳しくなった背景があり、そこで特殊詐欺グループに目をつけ、介入するようになってきた。以前はご法度だった犯罪(詐欺や強盗)にも手を染めるようになっている。要するに現在の暴力団は、金にためなら何でもやるということだ。

そうすると、この「ルフィ」は反社のシノギの一翼を担っているにすぎないということにもなる。現場で強奪(詐取)した犯罪収益は、その中から実行犯に報酬が支払われ、大半が反社に上納されているものと思われる。

闇バイトの特徴として挙げられるのは、実行犯は使い捨てだということだ。実行犯は見ず知らずの者が集まった素人集団であり、行き当たりばったりの犯行を行い、そのため現場に証拠を残し、逮捕されるということ。

しかも、実行犯は組織実態が全くわからないため、いくら実行犯が逮捕されても、犯罪組織の上層部まで影響を受けることがなく、組織にとっては痛くもかゆくもないということである。つまり、実行犯は単なる使い捨てだ。

さらに、実行役は応募した際に、犯罪組織に個人情報(身分証、預貯金口座、家族構成等)を提出させられるという。従って、いくら組織から抜けたいと言っても、「家族がどうなってもいいのか」と脅され、逮捕されるまでやめられないということになる。

要するに、闇バイトに応募しても自分の人生を台無しにしてしまうという結果に繋がるのだ。「高額」とか「即日現金」という言葉に目が眩み、金欲しさで応募するのだろうが、甘い考えを持つと、取り返しのつかないことになってしまう。地獄に陥ってしまうことをよくよく自覚してもらいたいものである。

今回、「ルフィ」ら指示役の逮捕までこぎつけたのは、警察の苦労の賜だろう。犯罪組織実態を解明してもらいたいとの思いはあるが、経験者としてなかなか容易なことでないこともわかっている。

しかし、手をこまねいているわけにはいかない。このような犯罪組織を壊滅させるには、各都道府県警察が連携をとりながら着実に捜査を進めてことも必要ではあるが、闇バイトに応募する若者を一人でも減らしていくような施策も必要だと言えるだろう。

 

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