気をつけたい認知症
「お父さん、晩ごはん何にする?」毎日のように家内から聞かれます。以前は何でもいいと答えていましたが、主婦にとってはそのような回答ではだめだということです。食べたいものをはっきりと言えということらしいです。
しかし、当方としてもそんなに食べたいレパートリーはないので、直近に食べていないものを答えるようにしているのですが、ときおり、「あれ、昨日は何食べたかな?」とつい忘れてしまっていることがあります。
年をとると、昔のことは覚えているのに、直近のことを忘れていたり、人の名前が出てこないことが多いと言われますが、それを実感するようになってきました。これは、病気によらない脳の老化による正常範囲の「度忘れ」といったもので、認知症による「もの忘れ」とは異なります。
認知症とは、何らかの原因で脳の認知機能が低下し、日常生活や社会生活に支障をきたすような状態をいいます。認知症にり患すると、もの忘れ(記憶障害)のほか、認知機能障害、不安、幻覚、妄想、うつ症状、興奮、暴言、徘徊などの症状がみられるということです。
令和を迎え、日本人の平均寿命は、男性81歳、女性87歳と大きく伸び、医療技術等の進展とともに今後ともさらなる長寿化が予想されています。まさに人生100年時代を迎えようとしています。
一方、健康寿命は、男性で約72歳、女性で約75歳とされ、平均寿命からすると、9年から12年は日常生活に何らかの制限が加わり、様々な影響が出てくるということです。それにライフスタイルの多様化に伴い、いわゆる「おひとりさま」の単身高齢者(独居)も増加しています。
厚労省の推計によると、65歳以上の高齢人口のうち、認知症にかかる割合は、2015年は約520万人(16%)、2021年は約700万人(20%)と予測されています。年齢別では、80歳から84歳までは男性の約6人に1人、女性では約4人に1人、85歳から89歳ではこの割合がそれぞれ倍増するそうです。
認知症対策
このように高齢化と認知症の人が著しく増加していくことを考えると、その対策をきちんと整えておくことが重要です。誰もが「老いと死」から逃れることはできません。先の厚労省の推計が示しているように、生前に認知症にかからないという保証は全くありません。
健康で判断能力があるうちに、認知症にり患した場合のことや遺産相続、おひとりさまの場合の死後処理についても考えておく必要があるということです。認知症になってからでは誰かの援助がなければ法律行為などができないからです。
老いていく人生を成り行き任せにするのではなく、認知症などの健康問題が生じたときに本人の財産管理と身上保護についてどうするのか、やがてやって来る死後のことについてもどうしたいのか、大切な財産をどのようにするのかを考え、対策を打っておくということなのです。
・任意後見契約
その対策の一つとして任意後見制度があります。法定後見制度の場合は、本人の判断能力が不十分になった後、家庭裁判所によって成年後見制度が選ばれる制度です。任意後見制度は本人に十分な判断能力があるうちに、判断能力が低下した場合にはあらかじめ本人が自ら選んだ後見人に、代わりにしてもらいたいことを契約(任意後見契約)で決めておく制度です。
この制度の特徴は、任意後見人が本人の財産等の使い込みを防ぎ、任務を全うするように本人の財産、身上を保護するため、家庭裁判所から任意後見人を監督する任意後見監督人が選任され、任意後見監督人を通じて家庭裁判所が間接的に監督する仕組みになっています。
・民事信託
信託とは、委託者(本人)が財産(不動産、金銭等)を信頼できる受託者に託し、受託者は受益者(委託者等)のために、その信託財産から必要な給付を行う制度です。最近では受託者を家族とする信託(家族信託)が注目されています。
この信託のメリットは、委託者がどのような財産を誰に預け、それをどのように運用してもらうか、監督する人を定めるのかどうか、いつまで信託するのか、信託が終了した後の財産を誰にどのように渡すのかなどを全て委託者において自由に決められることです。
・見守り契約
一人暮らしの方が、将来の認知機能の低下に備え、見守り契約を締結しておくというものです。見守りの回数、内容、その報酬等は契約で自由に決めることができます。任意後見契約を締結するときに、この見守り契約も締結することによって任意後見契約の発効がスムーズにいくものと思われます。
・死後事務委任契約
一人暮らしの方が、親族以外の第三者等に死後の事務を委任するというものです。任意後見契約は本人の死亡と同時に終了します。そのため、葬儀、埋葬、供養、医療費、入院費、高齢者施設の利用費の支払、官庁等への諸届出、相続財産管理人の選任申立手続等について委任契約をしておくものです。
・遺言
相続は、「争続」や「争族」とも言われるように、家族に相続争いは起こらないと思っていても、自分の死後のことはどうなることかわかりません。遺言がないと、遺産分割協議で争いになることがあります。
貴重な財産を誰に、どのように相続させるか考え、遺言を残しておくことが大切です。争いが起こらないようにしておくのが家族に対する愛情でもあるのです。
認知症予防も大切
将来、認知症になった場合のことを考えた対策を述べてみましたが、まずは認知症を予防することも考えておかなければなりません。
医学的なことはわかりませんが、専門家によると認知症の原因となる病気によって予防方法は異なるようです。血管性認知症については、脳血管障害の原因となる生活習慣病を予防することが大切だということです。
いつまでも健康でいるためには、よりよい生活習慣を身につける必要がありそうです。バランスの良い食事を摂ったり、適度な運動も行う必要があります。