遺産分割の禁止とは、即時の遺産分割に適さない理由があれば、当面の間遺産分割を禁止することをいう。遺産分割を禁止するのは、被相続人の一切の財産のほか、財産の一部を分割禁止することもでき、禁止対象財産は特定されていることが必要となる。
分割を禁止する手段は民法に規定されている。それは、①遺言による遺産分割の禁止(民法908条1項)、②協議による遺産分割の禁止(同条2項)、③家庭裁判所による遺産分割の禁止(同条4項)の3つのパターンがあり、そのうち、①遺言による遺産分割の禁止がどういうものかを紹介する。
民法908条1項には、被相続人は、遺言で、相続開始のときから5年を超えない期間を定めて遺産の分割を禁止することができると規定している。この条文が示すとおり、まず形式要件として、遺産分割の禁止は遺言ですることになっている。つまり、被相続人が生前に口頭によって遺産分割を禁止しても無効となるということ。
次に、遺産分割を禁止する実質要件としては、㋐遺産や相続権の範囲が明確になっていない場合、㋑遺産の状態が即時の分割に適しない場合、㋒家族構成員の状態が即時の分割に適しない場合が考えられる。
例えば、遺産に不動産があり、その土地の境界について隣人と争っていたり、事業を継続するために遺産分割を避けたい場合などが考えられる。
また、被相続人である遺言者に妻と長男、それに未成年の二男がいる場合、親権者である母親が未成年の二男の法定代理人となって遺産分割協議を行うことは利益相反となる。この場合は、家庭裁判所が選任した特別代理人が二男の代理人として遺産分割協議に参加するという方法もあるが、遺言者の父親としては、二男が成年に達した後に遺産分割協議に参加させた方がよいと考えた場合、二男が成年に達するまで遺産分割を禁止する旨記載した遺言を残すことも可能である。
このように相続人間や相続遺産に特別の事情がある場合、遺言書によって遺産分割を禁止することも考慮する必要があり、その際、例えば、禁止の対象が不動産の場合、その旨(遺産分割禁止)登記しなければ第三者に対抗できないことや、相続税の申告についても、申告期限が延長されることがないことなど、禁止に伴って発生する問題にも注意する必要がある。