• 主に長崎県、佐賀県を中心に元刑事のキャリアを活かし行政書士&災害危機管理に取り組んでいます。

恐れと備え

新年早々、能登半島地震と羽田の航空機事故から始まった令和6年。このような大惨事が立て続けに起きるとは―令和6年が物情騒然になる幕開けのような気がするのは私だけだろうか。

今年は辰年。十二支の中で唯一架空の動物であり、一般的に大きなことが起こる年だと言われているが、これ以上の厄災は勘弁してもらいたいものだ。とはいうものの、何が起こるかわからないのが世の中。危機管理の要諦は恐れと備えであり、その準備は必要であろう。

冒頭の二つの災害を例にすると、まず能登半島地震は直下型で、家屋の倒壊や火災を引き起こしている。亡くなった方は、東日本大震災のような大津波によるのものではなく、倒壊した家屋の下敷きになっているようだ。

1995年の阪神淡路大震災での死者は、古い耐震基準で建てられた木造家屋が倒壊し、その下敷きになっているが、今回の能登半島地震を観ると、この阪神淡路大震災が再現されているような気がしてならない。

我々は、東日本大震災から津波防災の教訓を学んだ。それは直ちに高台に避難せよとの精神武装である。すると今回の能登半島地震のような直下型地震では、どのような防災対策をすればいいのか。震度7を超えるような地震に襲われると耐震基準を満たしていない家屋は倒壊するだろう。そうすると、まずはそれに耐えるハード面の対策が必要となる。それに、例えば深夜に大地震が発生することを想定し、その場合、どこに就寝した方がいいのか、発災時はどのような行動をとるべきか、自宅の環境に応じた対策を頭に入れておくべきだろう。それが恐れと備えだ。

羽田の航空機事故は、海保機側の搭乗員5名が犠牲になったが、そもそも同機は能登半島地震の被災者に救援物資を運ぶためであり、それを思うと本当に辛いことだ。まずもって哀悼の意を捧げたい。その中で、日航機の乗客乗員379名全員が機外に脱出できたことは幸いだったと言える。恐らくこのときの脱出の教訓は、良き教材として後世まで残るだろう。

この事故の原因について、現段階では軽々に言及することはできないが、ヒューマンエラーが根底にあったことは予測される。運輸安全委員会の事故調査と警視庁の捜査が始まったが、原因が特定できるまでは長期間を要すると思われる。

警察は、業務上過失致死傷事件として捜査することになるが、私の経験上、この種事件での過失認定は複合的なものになることが多い。要するに、大なり小なり関係者の過失が複合的に重なっていることが多いのだ。

捜査は、どうすれば事故が防げたかの観点に立ち、機体の異常が否定できれば、事故原因を洗い出し、その原因を一つ一つ吟味しながら関係者の過失の有無(予見可能性、結果回避可能性)等をつぶさに観ていくことになる。

災害や事故はいつ、どこで発生するかわからない。特に自然災害は時と場所を選んではくれない。まさか正月元旦にこんな災害があるとは誰もが思ってもいなかっただろう。そして、次の日に航空機事故が起こったことに対しても同様だ。

災害に対しては、誰にでも共通することであるが、他人事だと思わないこと。これが恐れと備えの出発点となる。また航空機事故に関しては、乗客の命を委ねられていること、ヒューマンエラーは必ず起きることを肝に銘じる必要がある。運輸関係者は、二度とこのような悲惨な事故を発生させないよう、原因の洗い出しとヒューマンエラーを補完する対策を徹底していただきたい。

 

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