• 主に長崎県、佐賀県を中心に元刑事のキャリアを活かし行政書士&災害危機管理に取り組んでいます。

出火元の法的責任

年末年始は火災に注意

年末年始は、火気を使う機会が増えるため火災が増加する傾向にあります。それにこの時期は空気が乾燥していることも、火災が発生しやすい要因になっているようです。

警察官現役時代は数多くの火災現場を経験しましたが、石油ストーブや石油ファンヒーターを原因とする火災が多かった記憶があります。灯油とガソリンを間違えて給油したり、一旦火を止めて給油しなければならないところをそれをせずに引火したり、ストーブの近くに洗濯物を干し、それに着火する事案をよく経験しました。

それに鍋物に火をかけ、それを失念したまま外出して出火する事案もよくありました。また年末年始では火災の報道もよく目にします。しかも焼け跡から遺体が発見されたという事案も少なくありません。

火災は全財産を失ってしまいます。厳冬の中で大切な自宅を焼失してしまえば大変な境遇に陥ります。そうならないためにも特にこの時期は火災に注意しなければなりません。

糸魚川大火

平成28年12月22日、新潟県糸魚川市の飲食店で火災が発生し、その火が糸魚川駅北側から日本海沿岸まで南北方向に広がり、144棟、約4万㎡が焼損するという大規模火災に発展しました。

出火原因は出火元の飲食店(ラーメン店)のコンロの消し忘れだということです。延焼による火災の規模としては最大級です。

この日は、日本海を通過中の低気圧に向かって強い南風が吹き込んでおり、空気を乾燥させ気温を上昇させるフェーン現象が起きていました。それに商店街や木造住宅の密集地域であったことが延焼を拡大させた要因とも言えます。

この火災での人的被害は、軽症15人、中等症1人であり、死者・行方不明者は出ませんでした。負傷者のうち14人は消防活動中に負傷した消防団員であり、その他には住民が避難中に転倒したり、煙を吸って軽傷を負ったもので、人的被害が少なかったのは不幸中の幸いだったと言えるかもしれません。

出火元の法的責任

糸魚川大火の出火元の店主は、翌29年11月15日、業務上失火罪として禁固3年、執行猶予5年の有罪判決を受けています。

火災を発生させると刑事上の責任、民事上の責任を問われます。刑事上の責任としては放火及び失火の罪がありますが、当然放火罪の方が罪が重くなってきます。失火罪については過失によって出火させることをいい、失火罪、業務上失火罪、重過失失火罪が規定されています。

飲食店店主は業務上失火罪で有罪判決を受けましたが、当然、店主は「業務として火の安全に配慮すべき社会生活上の地位」を有していますので、失火罪よりも重い業務上失火罪に問われたのです。

民事上の責任については特別の規定があります。民法第709条には、故意または過失によって他人に損害を与えた場合、損害を賠償しなくてはならないとする「不法行為責任」が規定されています。しかし、火災については失火責任法(失火ノ責任ニ関スル法律)に例外規定があり、重大な過失(重過失)がない限り、民法第709条の規定は適用されないことになっています。

失火責任法は明治時代に制定された法律であり、日本は狭い土地に木造家屋が密集し、延焼が不可避な環境の中で、出火元が財産を失った上、さらに責任を負わせるのは酷だろうという考えが背景にあったようです。

責任を問われるのは重過失があるときですが、賃貸物件の場合は該当しません。入居者は賃貸契約により借りた建物を返すときは元通りに回復して返還する義務(原状回復義務)を負っていますので失火責任法の適用は受けないのです。

重過失とは注意義務を著しく怠ったことをいいます。僅かな注意を払いさえすれば結果を回避することができたであろうという場合のことです。

重過失が認められた裁判例には、ストーブに給油する際、ストーブの火を消さずに給油し、こぼれた石油に着火して発生させた場合、天ぷら油が入った鍋をコンロに火をつけて台所を離れて発生させた場合、石油ストーブに灯油を注入すべきなのにガソリンとオイルの混合油を注入して発生させた場合などがあります。

ただし、火災発生の条件等は事案ごとに異なり、一定の行為が一律に重過失とされるものでもありません。そのときの状況や条件等を踏まえた上で個別に判断されることになります。

糸魚川大火では民事訴訟に発展していませんので、重過失の事案であったのかどうかは不明ですが、そもそも出火の原因は店主の過失にあります。そのため本来ならば人災と言えるのでしょうが、この火災が強風によって瞬く間に燃え広がったものとして自然災害と認定され、そこで被災者支援のため「被災者生活再建支援法」「災害救助法」が適用されています。

この火災の被害額は莫大なものになろうかと思います。例え重過失が認められたとしても個人が賠償できるような金額ではないでしょう。被災者に対しては支援金400万円が支給されたということですが、火災保険に加入していない人もいたであろうし、加入していたとしてもどこまで特約をつけていたのか、おそらく元の姿に戻るには到底この支援金では足らないかもしれません。

火災の出火原因はいろいろあります。放火、タバコ、コンロ、配線器具、火遊び、電気機器・・・など多岐にわたっています。自然発火もあるし、原因不明の火災もあります。防げない火災も確かにありますが、過失によって出火させることだけは防がなければなりません。

自宅を焼失し、全財産もなくし、雪が降りしきる中、ガタガタと震えながら焼け跡を見つめていた被害者の姿を思い浮かべることがあります。かける言葉がなかなか見つかりませんでした。私たちの便利な生活の裏には危険が潜んでいます。その危険に気づくかどうかは意識の問題です。気づかなければならないところを、慣れや慢心によって気づかなかったということがないようにしたいものです。自宅や財産は自分が守らなければならないのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

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