• 主に長崎県、佐賀県を中心に元刑事のキャリアを活かし行政書士&災害危機管理に取り組んでいます。

特殊詐欺 被害防止対策にさらなる工夫を

一向に減らない特殊詐欺

高齢者から現金を騙し取る手口の特殊詐欺被害は、一向に減少せず、深刻な状況が続いています。警察庁は昨日、昨年の特殊詐欺事件の統計値を発表しました。それによると、認知件数は1万3550件、被害額は285億2000万円だということです。

被害額が多い順の内訳は、「オレオレ詐欺」が126億1000万円、有料サイト利用料金請求名目などの「架空請求詐欺」が79億8000万円、警察官などを装いキャッシュカードを騙し取る「詐欺盗」が46億6000万円です。

3日前の朝刊にも「老人ホーム入居権当選詐欺に注意」という記事が掲載されていました。記事によると、不動産会社社員を名乗る男から高齢女性宅に「老人ホームの入居権が当たりました。」という電話があり、その女性が「いらないから他の人に譲る。」と断ったところ、今度は弁護士を名乗る男から「あなたの名義で他の人が入居したが、名義を貸すのは犯罪。解決には現金が必要だ。」と言われ、男が指示するまま現金を送り続け、全財産を失ったということでした。

この手口の詐欺事件は、いわゆる「劇場型」と呼ばれものです。犯人グループが、複数の事業所や団体を装い、あたかも告げた内容が事実であるかのように装い、高齢者から現金を騙し取るものです。

「老人ホームの入居権の名義を貸して」「株式を購入するのに名義を貸して」など、名義貸しにはいろいろなパターンがありますが、この名義貸しでは、犯人グループがシナリオどおりの役柄を演出し、最後には「名義を貸すことは犯罪」「逮捕される」「解決には金が必要だ」などと被害者の恐怖心をあおり、現金を支払うように仕向けるもので、被害者の心理に巧みに付け込んだものです。

落ち着いて考えれば詐欺だと見抜けるのではとつい思いますが、実際に被害に遭った高齢者ほど、「自分は被害に遭わない」という認識を持っていたという統計があります。何故、被害に遭わないという自信を持ちながら被害に遭ってしまうのでしょうか。

心理学の分野からその要因について分析した文献もありますが、専門家でもありませんので内容については控えます。ただ、この専門家も研究結果を踏まえ、それに応じた被害対策を提言しているようです。

それに報道機関も「電話口で現金を要求されたら詐欺、家族や警察に相談してほしい。」などと呼び掛けたり、自治体、その他の機関・団体もそれぞれ広報活動等に取り組んでいます。

警察としても自動通話録音機の貸し出しやコールセンター等と連携した広報活動、その他あらゆる被害防止対策を講じています。

新たな手口が次から次へと誕生し、対策が後手に回っていることにも原因があるのかもしれませんが、これだけ官民学あげて特殊詐欺被害防止対策を行っているにも係わらず、一向に被害が減少しないのならば、これまでの対策を抜本的に見直す必要があるのではないでしょうか。

さらなる工夫を

以前のブログにも触れましたが、特殊詐欺事件は、平成10年頃に「オレオレ詐欺」という形で台頭し、その後いろいろな手口が進化して現在に至っています。このオレオレ詐欺の台頭とともに、それまで財産犯の主流を占めていた窃盗犯から詐欺犯へと財産犯の形態が変貌していきました。

窃盗犯のように捕まる危険性を冒すのではなく、姿を見せずに電話一本で大金が手に入る特殊詐欺へと方向転換したのです。捕まるのは、せいぜい出し子や受け子のように現金授受の現場に姿を現す者たちです。主犯格までたどり着けないのが実情です。

犯人グループは反社会的勢力(暴力団等)の傘下だったり、連携していると言われています。高齢者の方が老後のために蓄えてきた大切なお金がこのような輩の勢力の維持にも繋がっているのです。

ですから特殊詐欺被害を防止することは、高齢者の被害を防止するばかりでなく、犯行グループをのさばらせないためにも必要なことです。特に最近ではアポ電という手口で、在宅を確認して強盗事件や殺人事件を敢行する凶悪事件まで発生しています。

特殊詐欺が台頭して20数年が経っています。その中には高齢者自身が犯行に気づいたり、家族や金融機関が未然に防止したという事例はあります。警察も取締りを強化しており、昨年の摘発件数7424件は過去最多だということです。それに関係機関・団体もハード面、ソフト面ともに地道な対策を行ってきています。

それでも一向に被害が減少しないということは、これまでの対策では、まだまだ高齢者に響いていないのだと思います。

日本社会は超高齢化社会に突入します。抜本的に対策を見直したり、さらなく工夫をしなければ、今後益々被害は拡大していきそうです。そうなると犯行グループを暗躍させるだけです。犯行グループは益々悪知恵を働かせて新たな手口の詐欺事件を敢行してくるでしょう。

超高齢化社会では相続問題、認知症問題とも併せ、この特殊詐欺対策も喫緊の課題になりそうです。特に一人住まい(独居高齢者)の被害対策には知恵を出すことが求められます。言うのは簡単、それならば知恵を出してみろと言われるかもしれませんが、私も名案があるわけではありません。

ただ一つ気になっていることは、「自分は被害に遭わない」という意識がある高齢者ほど被害に遭いやすいということです。犯人側の巧みな話術にもよるのでしょうが、そういう意識がある人ほど信じて疑わない心があるのだと思います。

ですから、相手が弁護士だったり、市役所職員だったり、警察官だったり、固い職業を名乗れば、おそらくそういう職業の者は嘘はつかないと信じ込んでしまっているのではないかと思われます。

相手を信じ込んでしまえば、会話の矛盾にも気づけず、冷静に状況を見極めることが難しくなってしまいます。こうなれば相手の言うがままです。このようなことを考えると、特殊詐欺被害防止対策は一朝一夕でなせるものでないことがよくわかります。

一方、認知症高齢者が保有する金融資産は200兆円にものぼるということです。高齢者全体を捉えると莫大な資産になります。GTPにも匹敵するような金融資産が少しでも詐欺集団に渡るようなことがあってはならないということです。

特殊詐欺被害防止対策については、当然、高齢者個人の被害防止になるわけですが、高齢者の金融資産のことを考えると、それだけで済むような問題でもないということです。何度も言うようですが、官民学が連携を強化し、何が効果があるのか、それぞれの立場で知恵を出し合っていただきたいと思っています。

高齢者の資産を守っていくことは、日本経済にとっても重要であるということを理解するべきです。

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