改正ストーカー規制法成立
5月12日、改正ストーカー規制法が衆議院本会議で可決成立しました。改正点はいくつかありますが、今回の改正で注目する点は、衛星利用測位システム(GPS)機器を相手の承諾なく取り付ける行為を罰則の対象にしたことです。
昨年7月30日、最高裁がGPSを使用して相手を探索した行為は「見張り行為」には該当しないという判断を示していました。
この事件は、被告人が、共犯者と共謀の上、多数回にわたり、元交際相手が使用している自動車にGPS機器をひそかに取り付け、その車の位置を探索して同女の動静を把握したというものです。第一審ではその行為が「見張り行為」に該当するとしたのに対し、第二審では「見張り行為」には該当しないと判断したもので、その上告審での判断でした。
最高裁は、ストーカー規制法2条1項1号は、「住居、勤務先、学校その他の通常所在する場所(住居等)」の付近において見張りをする行為について規定しているが、「住居等の付近において見張り」をする行為に該当するためには、機器等を用いる場合であっても、住居等の付近という一定の場所において動静を観察する行為が行われることを要するとしたものです。
要するに、被害女性が利用していた駐車場においてGPS機器を同女の自動車に取り付け、同駐車場から離れた場所で探索を行った行為は法の要件に該当しないと判断したのです。
この最高裁判断を受け、警察庁は昨年10月から有識者検討会を開催し、同検討会が今年1月に規制強化を求める報告書をまとめ、今回の改正に繋がったものです。
法は後追い
GPSとは、人工衛星が発する電波により、地球上の現在地を正確に測定するシステムをいいます。これは携帯電話等を用いて、特定のGPS機器の位置情報を確認することができるというものです。
行為者が携帯電話機等を用いてGPS機器の位置情報を探索すると、人工衛星が電波を発信した時刻とGPS機器が電波を受信した時刻との差から、人工衛星とGPS機器との距離を計算することにより、GPS機器の地球上の位置と時刻に係る情報を衛星から取得することができます。
行為者は、自分がどこにいようと探索対象であるGPS機器の位置情報を把握することができますし、機器の中にはリアルタイムで位置情報を探索できるものもあります。
このようなGPS機器は、車両の盗難防止や高齢者や子供の見守り、所在確認等を目的としたものにはそれなりの効果がありますが、ストーカー行為のように悪用されることもあるのです。
GPS機器が出現して数十年が経っており、現在では自動運転の実用化が着々と進んでいます。世の中が高度化している中で犯罪も多様化・高度化しているのですが、それを取締る法律はいつも後追いの形です。
憲法は罪刑法定主義を規定しています。何が犯罪となるか明確になっていなければならないという原則です。この原則の中には類推解釈が禁止されています。このような原則に則り、最高裁はGPS機器を使った探索が見張り行為には該当しないと厳格に解釈したのです。
いくら社会が高度化しようと、犯罪に対しては、そのときに法律で規定されている内容しか適用されませんので、世の中の動きと法律の適用にはギャップが生まれてきます。
この最高裁の判断が出てからは、違法ではないことを知った輩がGPS機器を取り付けたという事例も聞いています。
本来ならば、法制定時に将来を見据えながら違反形態を法律に盛り込んでもらいたいところですが、なかなか難しい面があるかと思います。ですから新たな形の犯罪が発生したならば、迅速に法改正することが必要です。そうしないと被害者を救えないし、悪をはびこらせることにもなってしまいます。