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公証人法の改正

公証制度とは、国民の私的な法律紛争を未然に防ぎ、私的法律関係を明確化にし、安定させることを目的としている。

例えば、各種契約については、当事者が合意をしており、それを基に公正証書を作成しておけば、金銭債務について強制執行ができる。遺言については、公正証書にしておけば遺言者の死亡後直ちに相続登記等の手続きができる。このように、公証制度は将来の私的紛争を予防することを主な役割としており、それが予防司法と言われる由縁である。

令和5年6月6日、民事関係手続のデジタル化を図るための改正法(民事関係手続等における情報通信技術の活用等の推進を図るための関係法律の整備に関する法律)が成立した。この法律は、公正証書の作成に係る一連の手続きについてデジタル化を図るものであり、令和7年に施行される予定である。

主な改正点として3点ある。1点目は、公正証書の申請(嘱託)がインターネットを利用して行うことが可能になるということ。現行法では、本人確認のための印鑑登録証明書などを提出するために公証役場に出頭することが必要だったが、改正法では、電子署名を付して行うことが可能となった(詳細は、今後法務省令で定められることになる)。

2点目は、公証人の面前での手続きについて、ウェブ会議を利用して行うことが選択できるようになるということ。これまで公正証書の作成に当たっては、当事者、公証人が一堂に会することが前提となっていたが、対面による手続きを見直すものである。例えば、身体的理由により公証役場に行くことができない場合、離島など公証役場へのアクセスが困難な地域に住んでいる場合、感染予防のために入所施設への外部者の立入りが制限されている場合などに応えるものである。

ただし、これには制限がある。ウェブ会議によって公正証書を作成する要件として、嘱託人が希望し、かつ公証人が当該申出を相当と認めた場合に限る。嘱託人の申出については、ウェブ会議の利用は国民の利便性を高める観点から認められるものであり、これを利用するかどうかは国民の意向に委ねることがよいという考えに基づいている。しかし、相手方がいる場合には相手方に異議がないときに限っている。例えば、金銭消費貸借契約公正証書で貸主側がウェブ会議を希望したとしても、借主側が異議を述べた場合は、貸主側はウェブ会議を利用できない。

公証人が相当と認める場合とはどういう場合か。例えば遺言公正証書については、遺言能力の有無が問題となることがあり、事後に遺言能力の有無を含め、紛争になることが多い。このような場合には、公証人が実際に遺言者に心身の状況や遺言の内容、嘱託に至る経緯等を慎重に判断することも必要となる。ウェブ会議の危険性として、画面に映らない場所に第三者が隠れ、遺言者に指示を出す場面も考えられ、そのような危険を孕んでいる場合にはウェブ会議を避ける必要が出てくるからである。

3点目は、公正証書の原本が、原則として電子データで作成・保存されるということ。書面に署名することがなくなったため、遺言公正証書の遺言者、証人の署名は、電子サインになるものと考えられる。また、紙媒体(書面)を求める方に対しては、正本・謄本と同様の効力を有する書面を交付することになっている。

 

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