現行民法では、離婚する際の親権は、父親、母親のどちらかの単独親権とされていた。令和6年5月に成立した民法改正法では、離婚後も父母双方が共同親権と定めることができるようになる等、子を養育する親の責務が明確化され、令和8年4月1日から施行されることになった。
改正された背景には、父母が離婚した後もその責任を果たすことが子の利益を確保する上で必要であること、また、アメリカ、イギリス、イタリア、スイス、韓国等主要な国で共同親権を採用している理由もある。
今回の民法改正では、共同親権について、「父母が協議離婚するときは、その協議で、その双方又は一方を親権者と定める。」と規定されている(法819条1項)。つまり、協議離婚する際の選択肢が広がり、共同親権か単独親権かを選択することができるようになった。
一方、裁判離婚の場合や離婚することには合意しているが親権者の定めについて協議が調わない場合には、家庭裁判所は、父母の双方又は一方を親権者と定めることになった(法819条2項、5項)。要するに、子の利益のために、父母と子の関係、父と母との関係などを考慮し、親権者を双方とするか、その一方とするかを定めることになった。その際、父母それぞれから意見を聴き、子が意見を表明した場合には、その意見も考慮しなければならない(法819条7項)。
ただし、父母双方を親権者と定めることによって子の利益を害するときは、父母どちらか一方の親権を定めなければならないとされている(法819条7項後段)。これは、父母が共同して親権を行使することがそぐわないからである。子の利益を害する形態としては、①父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあるとき、②父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を受け、父母が共同して親権を行使することが困難であると認めるときである。例えば、父親が子にDVや虐待を行っている場合や、父親が母親にDVを行っている場合が典型である。
また、現行民法では離婚届出にどちらが親権者になるかを記載しなければならず、記載がなければ離婚届出が受理されなかったが、改正民法では、親権者に関する協議が調っていなくても、親権者の指定を定める家事審判又は家事調停の申立がされていれば協議離婚の届出が受理されることとされた(法765条1校2号)。
その他、父母の果たすべき責務等が規定されているが、その中でも重要なものとして、養育費債権に「先取特権」が付与されたことが挙げられる(法306条3号、308条の2)。これまでは、養育費の支払いを怠った場合、財産を差し押さえるためには、公正証書や調停調書、審判書などの「債務名義」が必要だったが、今回の改正により、債務名義がなくても、養育費支払いについて私文書の合意書があれば差押えの手続を申し立てることができるようになった。また、離婚のときに養育費の取決めをしていなくても、一方の親は他方に対して、一定額の「法定養育費」を請求できるようになった。