国庫帰属制度の概要
2年後には団塊の世代(昭和22年生~昭和24年生)が後期高齢者となり、超高齢化社会が益々進展していくことになる。それに伴い、相続多発時代の到来が予想され、土地の相続問題が身近な問題になるのではないだろうか。
近年、所有者不明土地問題がクローズアップされている。土地を相続したものの、望まずに土地を所有したために管理不全の結果を招き、所有者不明土地の問題に繋がっている。平成29年の国交省の調査によると、国土の22%(九州全土くらい)が登記されず、所有者不明土地のまま宙に浮いており、これが国家にとっても大きな問題である。
この所有者不明土地問題は、東日本大震災の際にもクローズアップされている。用地を取得したり、仮設住宅を建設するときに、登記簿上の所有者と連絡がとれなかったり、連絡に膨大な時間がかかってしまい、復興の妨げになったという。災害大国である我が国では、今後ともこの種問題が復興対策に足かせになることが予測され、予防対策を行う観点からも所有者不明土地問題は国の重要施策として位置づけられた。
そこで、政府は相続登記を義務化したほか、相続又は遺贈によって土地を所有した方が、一定の要件を満たした場合、土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする「相続土地国庫帰属制度」を創設するなど、所有者不明土地問題解決に向けて各種施策を打ち出している。
相続した土地を手放す方法として、これまでは相続放棄や不動産売却の方法によって行っていたが、相続放棄の場合は、全ての相続財産を放棄することになるため、その一部だけを放棄することができず、また、売却を希望しても、買い手が見つからないことが往々にしてあり、これが管理不全に陥る要因にもなっていた。
この「相続土地国庫帰属制度」は、相続した土地の一部やいらない土地だけを国庫に帰属させる画期的な制度であり、この制度を利用することによって所有者不明土地の解消に繋がっていくのではないかと期待されている。ただし、同制度にも要件があり、申請しても全てが承認されるわけではないことを了知しておく必要がある。
国庫帰属制度の手続き
・申請権者
相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る)により土地を取得した者
・手続き
承認申請 → 受付(法務局) → 法務局担当官による書面審査 → 法務局担当官による実地調査 → 法務大臣・管轄法務局長による承認 → 負担金の納付(通知を受けてから30日以内・10年分の土地管理費相当額)→ 国庫帰属
・申請ができない土地
①建物の存する土地 ②担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地 ③通路その他の他人による使用が予定されている土地が含まれる土地 ④土地汚染対策上の特定有害物質により汚染されている土地 ⑤境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地