• 主に長崎、佐賀県を中心に元刑事のキャリアを活かし行政書士&災害危機管理に取り組んでいます。

防火・防災対策で気をつけたいこと

福祉施設(介護施設)や病院を経営する皆さまへ

 福祉施設(介護施設)や病院では、緊急時の避難行動が問われます。
何かあれば経営者の皆さまの責任も大きく、そこが神経を使うところだと思います。

 日本社会が益々高齢化し、看護師不足や介護士不足が叫ばれています。
そんな中、介助の質の向上、めまぐるしく替わる福祉制度への対応、働き方改革による労働条件の整備など、現場の大変さは増すばかりです。

 第一線では、人手不足に陥りがちの中、平常時でさえ手が足りないのに、災害時には、自力で歩行できない人や寝たきりの人の避難、安否確認等が伴うなど、さらに困難が待ち構えています。

社会の耳目を集めた火災事例

 次の事例は地元長崎県であったグループホームにおける火災です。

大村市で発生した高齢者グループホーム火災

 平成18年1月8日、長崎県大村市にある高齢者グループホームで火災が発生し、死者7名、負傷者3名という犠牲者が出ました。

長崎市で発生した高齢者グループホーム火災

 平成25年2月8日、長崎市にある高齢者グループホームで火災が発生し、死者5名、負傷者7名という犠牲者が出ました。

有識者による問題点の指摘

 この2つの火災では、有識者による調査・検証が行われ、そこで防火管理の問題点や設備・施設の問題点等が指摘され、それを踏まえた改善策が示されています。
 特に大村の事例では、次のような切実な問題点が指摘されています。

 現在、グループホーム自体の設備の不備や職員体制の不備を指摘する声が多くあがっています。 スプリンクラーや自動火災報知設備の設置、あるいは夜勤者を増やすべきという議論です。  しかし、グループホームは火災だけに対応すればすむわけではありません。 大きな地震や津波、洪水、崖崩れ、又は盗難等の犯罪、こうした様々な事態に対応できるようにグループホームの設備を強化し、職員体制を強化することは不可能であります。  地域で暮らす高齢者や障害者は、「もの」だけでは守れません。 障害がある人や高齢者を守るのはやはり「人」です。しかし、高齢者や障害者を守ることは、本人や福祉関係者だけの力だけでも不可能です。 地域の連携が極めて重要なのです。

より良い防火・防災を目指して気をつけたいこと

常に危機意識を持つことが大切

 上記の火災事例は、一番体制が弱い時間帯に発生し、消火、避難、通報を1人で担った夜勤員には、想像を絶する苦労があったに違いありません。
 日々の業務遂行に目が行きがちですが、管理者は、安全を確保するという視点を決して忘れてはなりません。
常に危機意識を持ち、日頃からやるべきことをしっかりとやる、これに尽きると思います。

 長崎市のグループホーム火災では、その点が問われ、施設代表者が業務上過失致死傷罪で有罪判決を受けています。

 昨今は、「災害は忘れぬうちにやってくる」と言われています。
災害は思いもしないところで、思いもしない形で突然発生することがあるのです。
他人事と捉えないことが大切です。

安全対策は独自の視点で

 皆さまの施設でも消防計画を作成していると思います。
それが職員全員に浸透しているかどうかは別として、内容がご自身の施設の実態と合致していますか?

 他の事業所と同じような「消防計画」や「マニュアル」になっていないでしょうか?仏作って魂入れなければ、無用の長物です。

 皆さまが作成している計画書は、施設ごとに一つ一つ違うはずです。
施設の立地条件、規模、職員の体制…など、それぞれ違うのですから。
特に体制が弱い時間帯のことを考えていますか?

 安全対策は、独自の視点で作成しなければ意味がありません。

そして全職員がその内容を共有しておくことが何よりも大切なことです。

自分たちの弱点を知る

 安全対策で大切なことは、まず自分たちの弱点はどこにあるのかを知ることです。

 例えば、皆さまの施設が閑散とした地域にあり、一番近い隣家まで100m離れており、夜間は当直の職員が一人、自力避難が困難な入所者10名、そこで深夜に火災が発生したと仮定した場合、どう対応されますか?
この場合、皆さまの施設の弱点は何でしょうか?
体制、通報・連絡、近隣との連携等、対策上の弱点がいろいろ出てきますよね。

 避難対策を立案するに当たっては、この弱点をどうやってカバーし、どう克服するかを考えるということです。
 そうすれば、平常時、どういうことをしておくべきか、万一発生した場合にはどう動けばいいかがわかってくるはずです。

全員で知恵を出し合う

 施設の状況を熟知しているのは、現場の職員の皆さんです。
そこで、計画の立案に当たっては全職員で検討することをお勧めします。
職員一人ひとりの気づきを大切にしてください。
見落とされがちなことが実は大事なことだってあるのです。

 例えば、避難経路を検討するとき、ある職員さんが、「実はその通路は段差があって転倒することがあるんですよ。」と提言したとします。
実は、この提言は避難対策にとって重要なことです。
 万一火災があって避難する場合、真っ暗な中を懐中電灯1本で高齢者を誘導し、一刻一秒を争う中でその段差に気づかず転倒したらどうなりますか…?

 このような提言があれば、その段差の補修が必要であろうし、違うルートを検討することも必要になってきます。

計画書の作成に当たっては、できるだけ多くの職員を参加させてください。
全職員が知恵を出し合うことによって現実的で実行可能なものとなるのです。 

 そして、このように全員一丸となることが、意思統一を図ることにも繋がります。

地域との連携

 災害対策では、地域の助け合い、支え合いが不可欠です。
自助努力も必要ですが、地域の防災力に期待するところは大です。

 先の大村市の火災の事例では、火災時、周辺に民家がないため、手助けしてくれる人がおらず、救出、消火、通報の全てを夜勤者一人でしなければならない状況でした。
 一刻を争う中で、入院患者や施設入所者を迅速に避難させるには、施設単独の力では到底十分ではありません。

 人の命を守るには、早い段階で付近住民の支援を受ける対策を考えてください。
 そのためには、近隣住民との良好な関係を保持していくことも必要です。
日頃から、付近住民と挨拶したり、コミュニケーションをとったり、地域の催しに参加したり、施設に招待することも大切なことになってきます。

訓練は実戦的に

 緊急時に咄嗟の行動がとれるのは、日頃からあらゆることを想定し、訓練を通じてその対策を講じているからです。
 先の火災事例が全て夜間に発生したように、災害も夜間とか朝とか、雨とか雪とか一切関係なく突然やってきます。
人の都合には合わせてくれません。

 そのため、防災訓練では、最悪の事態を想定し、それに対応できるかどうかを検証することも必要です。
例えば夜間や早朝の訓練を取り入れてみることも一つの方法です。
最悪の事態を想定するということは、最悪の状態を知ることから始まるのです。

 夜間、当直の介護職員が勤務している現場に行ってみてください。
そこで例えば、火災が発生したとして、伝達・通報訓練のような簡単な訓練を行ってみてください。
職員にとっては咄嗟のことですから、思うようにできないものです。

 危機管理は、そのような現実を知ることから始まるのです。

そうすれば、改善策を検討し、みんなで共有すればいいのです。